2014年2月10日月曜日

「ウルフ・オブ・ウォールストリート」破滅へと突っ走る、人でなしたちの破天荒で痛快な喜劇



愉快、痛快、大爆笑 ───!
人でなしのディカプリオ、最高です!
証券詐欺で、人をだまして金持ちに成り上がる人でなしたちの、破滅へと突っ走るハチャメチャなサクセスストーリーである。
なんと映画の80%に渡って、登場人物たちが切れまくる!
アドレナリン全開の馬鹿まるだし!ディカプリオ、わめきまくりです。
テンション高過ぎで、叫び、暴れ、唾もよだれも尿もスペルマも全てをまき散らしながらメチャクチャやり続けてくれます。
酒池肉林に留まらず、薬をヤリながら仕事をして、人をだまして金を巻き上げ、豪快に浪費、豪遊し、狂乱し、欲望のおもむくままに突き進む。
その登場人物たちのダイナミックな傍若無人ぶりに、面食らってのけ反ります。
隣にいたら超迷惑な奴ら。けれど、こんなパワフルな人達、見たことない!!
悪事のレベルに反して、彼らと一緒に気持ちは高まり浮かれちゃう!
映画を見るだけで、全く倫理に反する危ない陶酔を味わってしまえる映画なのである。

レオナルド・ディカプリオ演じる主人公のジョーダン・ベルフォート(通称ウルフ)は、本当に冗談のような男だ(失礼)
彼の巧みなセールストーク、話術は本当にスゴイ? Yes
その絶妙なトーク、または違法行為で、彼は人をだました? Yes
つまり彼は人の欲をあおった? Yes
彼を信じてしまった被害者も、欲にかられた? Yes
けれど短い間だが、彼に夢を見せてもらった? Yes
彼がそうして次々と人たちをはめていく様は爽快か? Yes
しかも彼がそのトークの技を、社会のくずのようなドラックディーラーに手ほどきし、彼らが素直に身につけ、会社がどんどんでかくなっていくのは大したものだ? Yes
そしてその結果、彼とその仲間が大金持ちになってゆく様は、見ていて快感だ? Yes
ジョーダンも仲間も本当に人生を楽しんでいる? Yes
けれどやっぱり、彼らは人でなしである? Yes
彼も仲間も狂っている? Yes
それでも彼らのパワフルさには圧倒され、思わず楽しみ、正直惹かれる? Yes
彼と仲間の突拍子もないハチャメチャな生き様に、一緒に熱狂した瞬間があった? Yes
おっと、そうなんだね。なら、気をつけな。彼らが突っ走っていく先は、破滅だからね。一緒に落ちないようにね。うふふ。

そう、思えば本作品のマーティン・スコセッシ監督の「タクシードライバー」や「ギャング・オブ・ニューヨーク」の登場人物たちも同じように破滅に向かっていた。けれど、この映画の登場人物はこれまでのスコセッシの映画のように苦悩に満ちてないところが逆に嬉しい。同じ破滅に向かっていても、底抜けに陽気で明るく馬鹿で痛快だ。
罪悪感を持たない彼らは確実に反社会的だけれども、憎めない。
なぜなら、もともと彼らは、やり手には見えないドラッグディーラーなど社会のはみ出し者だからだ。そんなダメ人間たちが、主人公ジョーダンの話術を素直に吸収し、実践し、ジョーダン同様に顧客を獲得し、その達成感に快感を得ていく。やり方は間違っているが、ダメ人間なりに、人生を謳歌している、努力しているのだ。だから彼らの快感に共感して嬉しくなってしまう。
間違っていると判っているのに、惹かれてしまう。
正しくないことに惹かれる ───。その人間の面白さと、先の悲劇を、説教をせずに永遠と見せつけてくれるところがまたイイ。
馬鹿を続ける彼らの姿を永遠見続ければ、誰だって最後は呆れ果てて、哀しくなってくる。
その行く末は、社会の制裁。そして彼らの家族のように、皆離れていってしまうのだ。。。
真面目に言えば、この映画は、強欲な登場人物たちの強欲な生き様をとことん見せつけることで、その行き過ぎに警鐘を鳴らしている。

でもふと思う。日本人には、こんな笑っちゃうほど罪悪感ない強欲人間はどれほどいるだろうか?
ウルフたちの生き方、考え方と行動に呆れると同時に、そのパワフルな欲望を自制しない生き様に、羨望を抱かずにはいられない。
人でなしの彼らからみたら、満員電車に疲れ顔で通勤する普通の人達は、何が面白くて生きているのか判らないゾンビのように見えるのだ。
実は僕らも、人でなしの彼らと同じように何かが間違っているかもしれない。

この映画は、人の欲望についての映画だ。
欲望は、人が生きるための潤滑油だ。
人に、欲望が足りなければ、面白みがない味気ない人生になるが、欲望が深すぎれば、どこかで破滅する。
この人間の欲望の果てに、文明社会が発達し、豊かに便利になり、同時に世界が破壊されていくのだ。
強欲は正しいか?
いいや、正論でいえば正しくない。
けれど強欲だからこそ、キラキラ光っている時もある。
だから、無欲で平凡で人でなしにもなれていないぼくたちは、ウルフたちの爪の垢くらいは飲むべきだろう。
たんぱくならば、欲を出せ!
もっともっと欲張りになるべきだ!破滅の沼に落ち入らない程度に ───。

馬鹿を見て大いに笑いたい。欲張りで、パワフルになりたい。でもちょっとだけ真面目に生き方を考えたいなら、、、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」にしやがれ!


追記1
映画の冒頭、証券マンとしてウォール街の一流証券会社に就職したジョーダン役のレオナルド・ディカプリオの面倒を最初に見てくれる先輩証券マン役が、マシュー・マコノヒー。この二人のランチシーンに、のっけから大爆笑。マシュー・マコノヒーのキャラとその演技が最高なのである!ランチしながらドラッグをやり、妙ちくりんな歌を歌う。そして顧客が株で儲けたら、必ず別の株を売ること。顧客から手数料を取ることだけに専念しろというアドバイス。その非人道的な理論を正しいことのように静かに淡々とユーモアを持って語るマシューにディカプリオが打ちのめされ洗礼を受けるのだが、同時に観客もマシューの演技に洗礼されてしまう。マシューはこの冒頭とほんの数シーンしか出て来ないのだが、映画の方向性を決める強烈な印象を残してくれる。このランチシーンだけ何度も見返したい!マシュー最高です!
(マシュー・マコノヒー、2013年公開の「ペーパーボーイ 真夏の引力」も凄い役&演技でした。)

追記2
本作全編に渡って面白いエピソードがてんこ盛りなのだが、次に圧巻なのは、ジョーダンが、相棒ドニー(ジョナ・ヒル)と発売禁止になった幻のドラッグ(通称レモン)をキメて修羅場になる一連のシーン。二人とも、歩けないほどトリップしたところ、最後ドニーが食べ物をのどに詰まらせて死にそうになる。ヨダレをたらしながら這いつくばってそれを助けようとするディカプリオ。恐ろしく真剣なシチュエーションなのに、ふらふらぐでぐでのお馬鹿な動きでその困難を乗り越えようと格闘するディカプリオ。その間抜けさと反比例するようにディカプリオの名演技に参ります。

追記3
馬鹿なことを真面目に永遠やり続ける登場人物たちを描く凄い映画と言えば、「ビッグ・リボウスキ」が真っ先に思い出されるが、この映画と比べてみると「ウルフ・オブ・ウォールストリート」は強欲社会への警鐘的意味合いが強い大変真面目な映画であることが判る。笑って楽しめる映画が笑い事か、笑い事でないかという違いである。

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